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引きバネが折れる原因は?フック部折損を防ぐ4つのポイント

引きばねに起こりやすい折損について原因と対策を説明しています。

引きバネを使用していくと、へたりや変形だけでなく、折れてしまう=折損のトラブルが発生することがあります。今回は引きバネが折れる理由と防止策について解説します

▼実際に引きバネを製造している様子です。

引きバネは、伸ばされたときに元に戻ろうとする力を使うバネですが、一定以上の応力や変形がかかると、金属疲労などによって破断することがあります。折れる現象によって、製品や装置の機能が損なわれてしまう状態を折損と呼びます。

折損原因を分類化

  • 折損の原因は、大きく加工時と使用時に分けられます。

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    折損原因の分類を説明します

  • ■加工時の折損要因
    •材料内部の欠陥(組織異常など)
    •成形時のクラックや折り曲げによる傷
    •不適切な熱処理(テンパー処理不足等)

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  • ■使用時の折損要因
    •フック部などに局所的な応力集中
    •腐食環境での使用(錆びによる疲労強度低下)
    •無理な取り付けや伸びすぎによる設計ミス

  • •表面処理の不備

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  • 折損の原因は複数重なることもあります。設計段階で材質や形状を見直すことが再発防止につながります。
    ばね試作・開発の進め方での検討ポイントの詳細はこちら

引きばねの折損を防ぐ方法

特にフック部分(端部)は、折損が最も起こりやすい部位になります、以下のような改善が有効です。

▪フック形状の改善
丸フック → U字フックやループ状に変更
フック根元の応力集中を減らすことで折損を防止

▪応力を分散させる工夫
急カーブを避け、緩やかな接続を採用
線径を太くしたり、巻数を増やして応力を分散

▪材質・強度の見直し
用途に合わせて強度の高い素材を選定
材料の耐力・疲労強さ向上のための低温焼きなまし処理

引きばねの折損事例と解決策

ある食品製造機械で、引きバネのフック部が折れるトラブルが発生しました。お客様のヒアリングの元、以下の改善提案を実施しました。

◦事例:食品製造機械でフック部の根元が折れるトラブル
◦条件:材料変更不可(コスト制限あり)
◦改善策:フック形状を「丸型」→「U字フック」に変更
◦結果:試作で効果を確認後、量産採用

試作で効果を確認後、量産採用となりました。
お客様事例はこちらをご覧ください。

引きバネの折れ対策

折損に悩んでいる方は下記4点を注意し、引きばねの設計や使用用途を見直すことをおすすめします。

  • 用途に合った強度の高い材質を選ぶ
  • 過大な応力をかけない設計にする
  • ばね製造時に表面欠陥を作らない
  • 材料の耐力、疲れ強さなどの向上を目的とする低温焼きなましを施す

引きバネに限らず、押しバネやトーションバネでも折損は発生します。特に、設計段階での応力検討や表面処理の管理が不十分な場合に起こりやすくなります。

栄光技研株式会社では、「図面はあるのに、すぐ折れてしまう…」「繰り返し使っていると突然折れる」・・・そんなお悩みには、フック形状・材料・応力の見直しを含めた総合的な提案をいたします。
お気軽にご相談ください。

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