ニッケルを主成分とした耐食・耐熱合金で、ステンレスでも耐えられない過酷な環境で使われています。化学プラントや医療・半導体分野など幅広い業界で活躍し、ばね加工にも応用可能な素材です。今回は、ハステロイの基礎知識から代表的な種類、用途、そしてばね加工における特徴までわかりやすく解説します。
ハステロイの特徴
ハステロイは、ニッケルを主成分とした合金で、アメリカのHaynes International社が開発した耐食・耐熱合金の商標名です。特徴は主に大きく分けて4点あります。
▪高い耐食性
酸、塩素、海水といった強い腐食環境にも耐える。
▪優れた耐熱性
高温下でも強度や耐食性を維持できる。
▪良好な機械的特性
靭性や延性があり、割れにくい。
▪加工の難しさ
切削・曲げ・溶接は可能だが、ステンレスに比べて難加工でコストも高い。
代表的な種類と特性
ハステロイの代表的な種類を以下の内容にてまとめています。
◦ハステロイC-22:酸化性・還元性のどちらにも強く、幅広い用途に対応可能。
◦ハステロイC-276:最も広く普及しているグレード。酸・塩素環境で安定した耐食性を発揮。
◦ハステロイB-2:塩酸に対する耐性が特に高い。
◦ハステロイX:高温強度に優れ、航空宇宙分野など高温環境に利用される。
ハステロイの主な用途
ハステロイはさまざまな業界で使われており、代表的なものを挙げると以下の通りです。
- 化学プラント:酸処理設備、塩素系薬品を扱う装置。
- 半導体製造装置:腐食性ガスを扱う工程部品。
- 医療機器:薬品耐性や清浄性が求められる部品。
- 航空宇宙:高温下でも特性を維持する部品。
ばね加工における注意点
バネ加工における注意点は4つです。
▫耐食ばね用途に有効
酸・塩素・薬品にさらされる環境でも錆びにくく、長寿命のばねが可能になります。
▫高温環境でも性能を維持
ステンレス製のばねが劣化する温度帯でも、弾性特性を比較的安定して保つことができます。
バネ材の一種であるステンレスについてはこちらの記事をご覧ください。
▫加工難易度が高い
ニッケル基合金は硬く、巻き取りや曲げ加工が難しいため、精度や公差について事前打合せ等を行うことをおすすめします。
▫設計時の留意点
ばね定数や強度計算はステンレスと同様に可能ですが、使用環境(薬品・温度・湿度など)を十分に考慮して材質を選定することが重要です。
栄光技研株式会社では、ハステロイを使用したばね加工の実績があります。試作や材質選定でお困りの際は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。ニーズに合った最適なばねをご提案いたします。