ねじや歯車といった規格品と違い、バネは使用環境や求められる動きに応じて設計されることが多い部品です。なかでも圧縮バネ(押しバネ)は、荷重を受けて縮むというシンプルな動作をしますが、設計が甘いと製品の性能や寿命に大きく影響します。今回は圧縮バネの設計の基本を解説します。
圧縮バネ(押しバネ)は、縮む力を利用して部品を押し戻す機能を持つバネです。自動車・家電・産業機械など、あらゆる製品に使われています。用途や形状に応じた多数の実績があります。
当社の圧縮バネの製品実績一覧はこちら
押しバネを設計するときの基本記号
圧縮ばねを設計する際は、基本的な記号や用語の理解が必要です。以下に主要な用語を示します。
まずは、基本用語や記号の意味をしっかり押さえましょう!
用語 |
意味 |
線径(d) |
ばねのワイヤーの太さ |
コイル中心径(D) |
コイルの真ん中の直径 |
有効巻数(n) |
実際に力を受ける巻数 |
ばね指数(C) |
コイル中心径 ÷ 線径|加工性や耐久性に関係する |
ばね指数(C)
ばね指数(c)はばねの加工性や寿命を設計する上で重要な値です。
計算式:
\[ C = \frac{D}{d} \]
D :コイル中心径(mm)
d :線径(mm)
ばね指数(C)は、4〜22が目安で、外れると加工が難しくなります。
圧縮ばねを設計するときの基本式
ばね定数や応力が設定できれば、線径や巻数、コイル径などを選定していきましょう。
●ばね定数(N/㎜)
ばねの硬さ(どれくらいの力でどれくらい縮むか)を表します。
\[ κ=\frac{Gd^4}{8nD^3} \]
(記号の意味)
•κ(カッパ) :ばね定数(N/mm)
•G :横弾性係数(ばね材料ごとに異なる)
•d :ばねの線径(mm)
•n :有効巻数(実際に力を受けるコイルの巻き数)
•D :コイル中心径(mm)
ばね定数が大きいと、硬くて縮みにくいばねになります。
●応力(Mpa)
ばねが荷重を受けたときに生じる「応力(材料の負担)」を求めます。
\[ τ=\frac{8PD}{nd^{3}} \]
(記号の意味)
•τ(タウ) :応力(MPa)
•P :ばねにかかる荷重(N)
•その他は前述と同じ
応力が大きすぎると、へたりや破断の原因になるため注意が必要です。
●ばね材料ごとの横弾性係数(G)
ばねの材料によって「横弾性係数(G)」が異なります。
横弾性係数は、材料の変形しやすさ に関係し、ばね定数の計算に必要です。主な材料の横弾性係数(G)は、以下の表になります。
ばね材料の横弾性係数 一覧表
材料 | Gの値 | |
ばね鋼材 |
\[ 7.85×10^{4} \] |
|
硬鋼材 | ||
ピアノ線 | ||
オイルテンパー線 | ||
ステンレス鋼 | SUS304 |
\[ 6.85×10^{4} \] |
SUS316 |
\[ 6.85×10^{4} \] |
|
SUS631 |
\[ 7.35×10^{4} \] |
|
黄銅線・洋白線 |
\[ 3.9×10^{4} \] |
|
リン青銅線 |
\[ 4.2×10^{4} \] |
|
ベリリウム銅線 |
\[ 4.4×10^{4} \] |
圧縮ばね設計時の注意点
押しばね設計時の注意点は大きく分けて2点です。
1.応力を低めに設定する
繰り返し使うばねや高温環境で使うばねなどは長持ちするように応力を低めに設計することが重要です。
(例)線径を太くする・有効巻数を増やす など
2.設計上は問題なくても、実際の製造が難しいことがある
線径が細すぎる、コイル径が小さすぎるなどの場合、製造が困難なことがあるので、現場の製造担当者と相談しながら設計することを推奨します。
(参考文献:はじめてのコイルばね設計 山田学 日刊工業新聞社)
よくあるトラブルと対策
バネにおけるよくあるトラブルと対策を下記表にまとめたので、ご参考ください。
トラブル |
原因 |
対策 |
バネが早くへたる |
応力が高すぎる |
応力を見直し、材料や巻数で調整 |
仕様通りの荷重が出ない |
計算ミス/公差の影響 |
公差込みでの再計算を実施 |
試作でバネが加工できない |
線径が細すぎる/巻きがきつい |
加工限界を確認して設計調整 |
栄光技研株式会社では、加工不可の形状でもできる形状でもご提案します。押しバネの加工性や寿命でお困りの方はお気軽にご相談ください。お問合せはTELやFAXでも承ります。
お問い合わせフォームはこちら