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バネの熱処理「テンパー処理」とは?耐久性や寸法安定に関わる重要なポイントを解説!

テンパー処理とも呼ばれている低温焼きなましの特徴と注意点を説明します。

ばねは長期間、使用すると形が変形してしまったり、折れたりする事があります。改善対策は様々ありますが、その内の1つである熱処理「低温焼きなまし」についてポイントをおさえながら説明します。ばね業界で使用されているテンパー処理は低温焼きなましです。

低温焼きなましとは

テンパー処理は、成形後のばねに一定の温度で熱を加える工程で、「低温焼きなまし」や「ブルーイング」とも呼ばれます。 薄板ばねの熱処理変化について説明します。

ばねの特性を安定させ、弾性限度(元の形に戻ろうとする力の限界)を確保するために行われます。ばね材料の種類によっては、処理後に青色が現れることがあります。(例:ピアノ線や硬鋼線)
ばねの場合、強度や弾性限度(元に戻らなくなる限界点)を確保するために、180℃〜500℃の範囲でテンパー処理が行われます。

なぜテンパー処理が必要なのか?

テンパー処理(低温焼きなまし)は、ばねの信頼性や性能を長期的に維持するために不可欠な工程です。主な目的と効果は以下の通りです。

① 寸法の安定化・残留応力の除去
ばね成形後の内部には、有害な残留応力が残ることがあります。テンパー処理によってこれを除去し、使用中の変形リスクを抑えることができます。
また、素材ごとに熱処理後の寸法変化が異なるため、設計段階でその変化を見込む必要があります。
○ピアノ線・硬鋼線・オイルテンパー線:焼き縮みが発生
○ステンレス鋼線:わずかな拡がりが発生
寸法精度が求められる用途では、処理条件を適切に設定することが重要です。

② 耐へたり性・疲労強度の向上
テンパー処理により、ばねの組織が安定し、長期間の使用による形状変化(へたり)や破損リスクを軽減します。
また、引きばねの場合は初張力が低下することがあるため、押しばねよりも低めの温度で処理するケースもあります。

処理温度が高すぎると、材料の強度がかえって低下する恐れがあります。また、処理までに時間が空いてしまうと、部位ごとの破壊(遅れ破壊など)が起こる可能性もあるため、できるだけ早めのテンパー処理が推奨されます。

テンパー処理の温度と時間(材料別の目安)

テンパー処理では、温度と処理時間の設定が重要です。ばね材料の種類・線径に応じて処理条件が異なります。

材料

温度(℃)

線径(㎜)

時間(分)

硬鋼線・ピアノ線

190~300

0.38以下

10~15

300~375

0.4~1.25

15~20

炭素鋼オイルテンパー線

180~220
350~450

1.3~3.0

20~25

ばね用ステンレス鋼線

400~500

リン青銅

180~230

0.64以下

20~30

※上記はあくまで目安です。使用条件や材料メーカーの仕様により異なる場合があります。

熱処理炉の種類と選定のポイント

テンパー処理は大きく分けて2種類の熱処理炉で行われます。
●連続式(ベルトコンベア方式):処理量が多く、自動化に向いている
●バッチ式(箱型炉):少量や多品種に柔軟に対応可能
処理の安定性や省エネ性なども考慮して、製品に合った設備で処理されているかも確認ポイントとなります。

栄光技研では、連続式とバッチ式の2種類の熱処理炉を備えており、製品に応じた柔軟な対応が可能です。「適切なテンパー処理が行われているか」「用途に応じた熱処理設計がされているか」は、ばねの品質に大きく影響します。お困りの際はお気軽にご相談ください。
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