炊飯器のような家電製品にも、実は多くのバネが使われています。特に蓋の開閉にはトーションバネ(ねじりコイルばね)が重要な役割を果たします。
しかし、試作段階で「市販のばねでは強すぎる」「折れやすい」「取り付けスペースに入らない」といった課題を耳にします。今回ははトーションバネの荷重設計と選定ポイントを、炊飯器を例にわかりやすく解説します
トーションバネの荷重設計で押さえる2つの視点
トーションバネの荷重設計では、「どれくらいの力で、どのくらい回転させるか?」を決めて、バネを選定していきます。設計を行う際に重要な視点は以下の2点です。
(1)使用用途(何に・どう使うか)
●開閉スピード:ゆっくり閉まる/勢いよく戻す
●使用頻度:1日3回以上開け閉めするなど
●必要な操作力:片手で軽く開けたい?バネの補助が必要?
(2)使用環境(どこで・どんな条件で使うか)
●温度:常温、加熱される環境など
●湿度:水蒸気・屋外・高湿度
●接触物質:洗剤・薬剤・塩分などの影響
2つの視点を考慮して、最適なトーションバネの荷重値と形状を決めます。
炊飯器に組み込まれているばねについて
炊飯器に組み込まれているばねの場合、使用環境と用途は比較的明確です。
下記にて使用用途と使用環境をまとめてみました。条件をふまえて荷重を設計していきます。
項目 |
条件例 |
使用用途 |
毎日3回以上、手動で蓋を開閉/ゆっくり閉まることが求められる |
使用環境 |
屋内だが蒸気が多く湿気の影響あり/高温時も使用される |
これらを元に、耐食性を確保するためにステンレス材(SUS304WPBなど)を使用し、巻数やアーム長さを調整して、柔らかめの荷重設定を選定します。
荷重を調整したいときは?
トーションバネの荷重を調整したい場合は、以下の3つの要素が設計のカギとなります。
① 材料の選定
強度重視:ピアノ線(SWP)
耐食性重視:ステンレス(SUS304、SUS316)
② 線径の選定
線を太くすると荷重は強くなり、細くすると軽くなります。
③ 巻数の選定
巻数が多いと荷重が弱く、少ないと強くなります。巻数を調整することで荷重を微調整できます。
トーションバネ設計でよくある不具合と対策
トーションバネの設計段階で発生しやすい不具合と対策は以下の通りです。
■ 不具合①:バネが早く折れる
原因:材料選定ミス/荷重が過大(使用条件に対してバネが無理をしている)
対策:用途・環境に合った材質(耐熱・耐食性など)を選ぶ、設計に余裕(安全率)を持たせる
■ 不具合②:バネが錆びる
原因:湿気・蒸気・水分などの環境に対する対策不足
対策:ステンレス材(SUS304、SUS316) を選定、必要に応じて 表面処理(防錆コーティングなど) を追加
栄光技研株式会社ではトーションバネの荷重設計から試作・量産まで対応可能です。「図面がない」「荷重が決まらない」「サイズ感が不安」といった段階でも、ヒアリングからサポート可能です。バネ設計でお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。
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