ピアノ線は、硬鋼線よりも高い信頼性を持つばね材で、主に工業製品に使用されます。高い引張強度(引っ張る力に耐える強さ)を持ち、硬さや耐疲労性にも優れているのが特徴です。
▼【製造事例動画】SWP-B φ1.6を使用したねじりコイルばねの加工工程をご覧いただけます。
楽器のピアノにも使用している?!
「ピアノ線」という名前ですが、一般的には工業用のワイヤーを指します。 楽器用のピアノ線は「ミュージックワイヤー(music wire)」と呼ばれ、音の均一性や使用時の負荷を考慮して作られており、工業用のピアノ線よりも高品質です
ピアノ線の特徴・用途
JIS規格(SWP-A/B/V)とそれぞれの用途例を紹介します。
●SWP-A、SWP-B:ブレーキやクラッチ部品、ベッドや建築用シャッターのスプリング、自動車のシートスプリングに使用。たとえば、自動車シートのばねには「SWP-B」が多く使用されています。その理由は、引張強度により形崩れしにくく、長期使用でもヘタリが起きにくいためです。
●SWP-V:船舶や自動車のエンジン部品(弁バネ)に使用
ピアノ線の成分
ピアノ線材はP,S,Cuなどの不純物が厳しく管理されています。(表①)
●傷の深さ:0.1mm以上の傷があってはならない
●脱炭層の深さ:0.07mm以下でなければならない
以下は、JIS規格に基づくピアノ線の成分表です。
表①ピアノ線材の化学成分表
種類記号 |
化学成分 |
|||||
C(炭素) |
Si(ケイ素) |
Mn(マンガン) |
P(リン) |
S(硫黄) |
Cu(銅) |
|
SWRS82A |
0.80~0.85 |
0.12~0.32 |
0.30~0.60 |
0.025以下 |
0.025以下 |
0.20以下 |
(参照URL:ピアノ線の成分について)
SWP-AとSWP-Bの材質の違いについて
SWP-A(A種)とSWP-B(B種)の違いは、材料強度です。用途に応じて、SWP-AとSWP-Bを使い分けることが重要です。
1.SWP-A(A種)
・繰り返し荷重(何度も力を加えること)に対して優れた耐性を持つ
・しなやかさがあり、成形加工しやすい
SWP-Aを使用した線加工品はこちらをご覧ください。
2.SWP-B(B種)
・SWP-Aより約10%高い引張強度を持つ
・耐ヘタリ性(使っているうちに形が変わらない特性)が高いが、加工しにくく、成形時の割れリスクが高い
SWP-Bを使用した線加工品はこちらをご覧ください。
(参考URL:A種とB種の違いについて)
栄光技研株式会社では使用環境に応じて、ばねの設計提案も可能です。「どのピアノ線を選べばよいかわからない」「SWP-Bの加工性について相談したい」といった設計・調達の課題がありましたら、お気軽にご相談ください。 設計段階からのご提案も可能です。
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