オフィスでよく見かける複合機のふたには、実はトーションバネ(ねじりコイルばね)が使われています。特に自動原稿送り装置(ADF)付きのふたでは、開閉のスムーズさ、安全性、耐久性を高めるために、バネの設計がとても重要になります。今回は、複合機のフタに使われるトーションバネについて、構造に合う理由、設計時の注意点、よくあるトラブルまで、分かりやすく解説します。
蓋に使われるスプリングの役割とは?
複合機のADFふたは、重さがあるため、開閉時には人の手に負担がかかります。そこでヒンジ部に取り付けられるのがトーションバネです。具体的には以下の2つの役割があります。
・開けるとき:重さを軽減し、手を離しても「バタン!」と戻らない
・閉めるとき:勢いよく閉まるのを抑え、安全性を確保
なぜトーションバネが選ばれるのか?
スプリングの中でもなぜトーションバネ(ねじりコイルばね)が使われるのか?理由は、回転運動を利用するふたの構造に対し、軸方向のねじり力で反発を生む構造がマッチするからです。
バネの種類 |
特徴 |
複合機に向く? |
引張りバネ |
直線的に引っ張る力 |
× 構造に合わない |
板バネ |
面でしなりを利用 |
△ スペースや形状制限あり |
トーションバネ |
軸方向のねじりで力を発生 |
◎ 回転構造にぴったり! |
トーションバネの設計ポイント
トーションバネの設計ポイントは主に大きく分けて3つあります。
1. 線径と材質
荷重バランスを考慮し、ピアノ線やステンレス(SUS304WPB)がよく使用されます。屋外や多湿環境の場合は耐食性のある材質を選定しましょう。
使用環境に合わせたステンレス材の選定についてはこちらをご覧ください
2.アーム角度・長さ
アームの長さや角度は、トルク(反力)に大きく影響します。数ミリの違いで開閉不良や取り付け不可になるケースもあります。
3.組み付け位置
バネが取り付く軸の位置とアームの始動角度によって、バネの初期トルクが変わります。「ふたをどこまで開けると自然に止まるか」も、トーションバネ次第です。
設計ミスによるトラブル事例
実際の現場では、以下のようなミスが発生することがあります。
●トルク不足でふたが途中で止まらない
●反発力が大きすぎて、開けるのに力が必要
●バネのアーム形状が設計図と異なり、組み付け不可
こうした問題を防ぐためには、トルクの設計と試作による検証が重要です。
蓋の開閉におけるスプリングの選定は、見た目以上に機能性に直結します。特にトーションバネは限られたスペースでも性能を発揮できるので、荷重設計によって使い勝手が大きく変わります。
「ヒンジの開閉がうまくいかない…」「バネの種類に迷っている…」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせフォームでご相談ください。
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