リン青銅は、銅+スズ+リンの三元合金で、電気伝導性・耐食性・めっき性に優れた材料です。電子機器や通信機器向けによく使われています。線材と板材ではJIS規格が少し異なりますが、今回は線材バネに焦点を当てて、リン青銅の特徴や他の銅線の違い、加工における注意点について説明します。
リン青銅線バネの特徴
リン青銅の特徴は以下の通りです。
◦加工しやすい柔らかさ
ピアノ線と比べると柔らかく、曲げや巻きが容易です。
◦熱処理でばね性を調整
約250℃で行う低温焼き鈍し硬化により、硬度が増してばね性が出ます。
◦良好な導電性
電子機器の接点バネなど、電気が通る用途に最適です。
◦耐食性・耐久性
湿気や薬品にも強く、精密部品でも長期使用可能です。
リン青銅バネとエナメル線バネの違い
精密部品や小型機器では、リン青銅とエナメル線が使われることがありますが、それぞれ特性に違いがあります。
特性 |
リン青銅線バネ |
エナメル線バネ |
材質 |
銅+スズ+リンの合金 |
銅線に絶縁コーティング |
加工性 |
柔らかく加工しやすい |
細線で巻きやすいが被膜に注意 |
導電性 |
裸線で電気が通る |
絶縁被膜があるため電気は通りにくい |
耐食性 |
高い |
被膜保護だが薬品に弱い場合あり |
■設計時の選び方ポイント
▪高荷重や耐久性重視 → リン青銅バネ
▪微細・細線で小荷重や巻きバネ用途 → エナメル線バネ
▪導電性が必須で裸線利用が可能 → リン青銅
▪絶縁が必要 → エナメル線
エナメル線について詳しくはこちらをご覧ください。
リン青銅線バネ加工時の注意点
リン青銅にて加工する際、以下の内容が注意点になります。
1.加工硬化・熱処理管理
曲げや巻き加工で硬度が変化することがあるため、必要に応じて低温焼き鈍し硬化でばね性を最適化し、性能を安定させる。
2.導電性を活かした設計
電気接点で使用する場合は、接触抵抗や電流値を設計段階で確認。導電性を活かすことで製品信頼性を向上できる。
3.耐食性の確認
湿気や薬品環境で使用する場合は、メッキ処理や保護層を検討。長期使用でも性能を維持できる設計が重要。
4.精密寸法の管理
試作や量産では、寸法誤差が性能に直結するため、精密寸法の維持を徹底。荷重・ばね性・導電性のバランスを確認する。
栄光技研株式会社ではリン青銅を使用したばね加工の実績があります。リン青銅バネの試作や量産に関してお困りの際は、弊社の実績ページやお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。ニーズに沿った最適なバネをご提案します。