ばねの強度と耐久性を向上させる方法として主に挙げられるのが、ショットピーニングとセッチングです。どちらもばねの熱処理の後に行う処理です。(熱処理の詳細はこちら)今回はショットピーニングについて詳しく解説します。
ショットピーニングとは
ショットピーニングとは、金属の小さな球を高速でばねにたたきつけることでばねの表面の汚れが落ちます。同時に硬く、強くなり、鍛えられることでばねの寿命が向上する表面処理です。主に弁ばねや懸架ばねなどのように繰り返し荷重を受け、疲れ強さが要求されるばねに対して行います。
線径φ1.0以下の小物ばねは、疲労強度向上の必要性が少なく、またショットピーニングによりばねの形状が変わってしまうため、ショットピーニングが行われる例が少ないです。
ショットピーニングの効果
ショットピーニングは成形、熱処理の後にセッチングに先立って行うのが一般的です。残留応力の付与のほか、表面層の加工硬化や微小なきずやへこみを解消するなどの効果が得られます。ショットピーニングによる残留応力はばねにとって良いことですが、成形した時に生じる残留応力は疲労破壊を早めるため、出来るだけ熱処理やショットピーニングで取り除きましょう。
ショットピーニングの注意点
ショットピーニングを行う上で注意点は以下4点です。
①表面の粗さ
ショットピーニングの唯一のデメリットは表面が粗くなることです。そのため適切な処理を行いましょう。
②ショットの摩耗
ショットと呼ばれる金属の小さな球は使用するごとに摩耗や割れることがあるので、定期的に補充することを推奨します。
③ショットピーニング後の傷
ばね成形時や熱処理時に出来た浅い傷(ショットピーニング前)は寿命の低下を防ぐことができますが、深い傷は防ぐことが難しいためショットピーニング後、傷をつけないよう注意が必要です。
④ショットピーニング後の熱や塑性変形の負荷
ショットピーニング後のばねに200℃以上の温度を長時間かけると、付与した残留応力が無くなってしまうので、出来る限り高温を加えないようにしましょう。
また金属の小さな球を高速で打つ際、当たっていない部分があると、成形時の残留応力が残り、ショットピーニングをする前より、ばねの寿命が低下するのでばね全体に当たるように、十分に処理を行う必要があります。
ばねの残留応力は疲労特性に影響します。加工後のばねには有害な残留応力が残っていますので、熱処理でできるだけ取り除きます。一方、ショットピーニングを行うことで、表面全体に有益な残留応力を付与し、耐疲労特性をさらに向上できます。
栄光技研株式会社では、ショットピーニング前に行う低温焼きなまし処理を行っております。
低温焼きなまし処理でも耐久性を向上することは可能です。ばねの熱処理についてお困りの方はぜひお気軽にお問い合わせフォームまたはお電話でご相談ください。