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SUS304・SUS316・SUS301の違いとは?ばね用ステンレス鋼の選定ポイントを解説します。

SUS304より耐食性、加工性を強化したいときに選ぶ材料はSUS301?SUS316?選ぶポイントについて解説します

ばね用のステンレス鋼として多く使用されているのがオーステナイト系ステンレス鋼です。中でもSUS304は、耐食性・成形性・コストバランスに優れた材料として幅広い用途で使われています。 しかし、耐久性や耐薬品性を求められる環境では、より高機能な「SUS316」や「SUS301」が選ばれるケースも少なくありません。
今回はSUS304WPBの特性を含めた鋼種ごとの違いや使い分けのポイントをわかりやすく解説します。

▼実際にSUS316を使用し、押しばねを製造しています。

オーステナイト系ステンレス鋼について

オーステナイト系は、耐食性・靭性・溶接性に優れた非磁性ステンレス鋼です。ステンレス鋼全体の中でも約6割を占め、機械部品や食品・医療などさまざまな分野で使用されています。ばね材料としても非常に汎用性が高く、防錆目的でのメッキが不要な点も特徴です。
代表的なばね用オーステナイト系ステンレス鋼には以下の鋼種があります。
●SUS301
●SUS304/SUS304WPB・WPA・304L
●SUS316/SUS316L

【製品事例】当社が手がけたステンレスばねの実績一覧はこちらからご覧いただけます。

オーステナイト系ステンレス鋼の種類について説明します。

SUS304WPB・WPAの違い

SUS304は優れた耐食性と加工性を持ち、最も広く使われているばね用ステンレス鋼です。

SUS304WPBとSUS304WPAの違い(ばね材仕様)

項目

SUS304-WPA

SUS304-WPB

特徴

成形性・耐疲労性に優れる

高強度・耐へたり性に優れる

引張強さ

やや低め

高め

成形性

良好(靭性あり)

やや劣る(硬め)

適した用途

精密成形のばね

高荷重・繰り返し応力に強いばね 

選定の目安は以下の通りです。
・強度や耐久性を重視するなら → SUS304WPB
・加工しやすさや繰り返し使用に強い設計なら → SUS304WPA

 SUS316とSUS304の違い

SUS316は、SUS304よりも耐食性が高いため、医療機器や化学プラント、海辺の設備など、過酷な環境下での使用に向いています。

比較項目

SUS304

SUS316

主な成分

Cr18%, Ni8%

Cr18%, Ni10〜14%, Mo2.5%

耐食性

良好

非常に高い(特に塩水・薬品)

加工性

良好

良好(Lタイプはより軟質)

コスト

標準的

SUS304より高価

使用例

家電・厨房機器・建材

医療機器・海洋装置・薬品設備

SUS316Lは、ローカーボン(低炭素)**を意味し、炭素量を抑えることで溶接性や耐食性がさらに高められています。

以下を参考に、用途に合った材質を選定できます。
・一般的な用途やコストを重視する場合 → SUS304
・薬品や塩分などにさらされる環境なら → SUS316/316L

SUS301とSUS304の違い

SUS301と304の違いは、設計初期の材料選定でよく問われるポイントです。以下のような性質の違いがあります。

比較項目

SUS301

SUS304

特徴

高強度・加工硬化性◎

高耐食性・加工性◎

クロム含有量

約16〜18%

約18〜20%

ニッケル含有量

約6〜8%

約8〜10%

炭素含有量

約0.15%

約0.08%

耐食性

SUS304に劣る

高い

主な用途

板バネ、鉄道・輸送機器

医療・食品機器、ばね全般

用途に応じて、以下のように使い分けることができます。
・バネ性や強度を重視するなら → SUS301
・幅広い用途や耐食性を重視するなら → SUS304

(出典 ばね用ステンレス鋼(SUS301, SUS304, SUS304L) | 特殊金属エクセル
ステンレス鋼の種類
(参考文献:ばね 入門 日本ばね学会 日刊工業新聞社

栄光技研株式会社では、SUS304WPBやSUS316などのばね用ステンレス材を用いたばねの製造実績が多数あります。 材質の特性を踏まえた最適な選定・設計アドバイスが可能です。
「材質選定で迷っている」「この環境に合う材質が分からない」など、お気軽にお問い合わせフォームまたはお電話でご相談ください。
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